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机の下の秘密基地
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江戸時代自習記【2】
前回の記事でも書いたが、林羅山という江戸時代の学者は自分の邸宅と書庫が火事に遭ってしまい、そのショックからか4日後に死亡している。

私がこの話を聞いて思い出したのは、同じ火事に遭っても全く正反対のリアクションを取った人物のことである。彼の名は絵仏師良秀(りょうしゅう)。古典の教科書には必ずと言っていいほど出てくるのでご存知の方も多いかもしれないが、『宇治拾遺物語』という説話集のあるお話に出てくる主人公である。

そのお話のあらすじはこうである。昔、絵仏師(仏画を描く職人)の良秀という人物がいた。ある日、隣りの家から火事が起こり、良秀の家にも火が移った。家の中には作りかけの作品があり、何より奥さんと子供がまだ取り残されている。しかし脱出に成功した良秀はそんなことは全く気に留めず、ただ満足そうに燃え盛る自分の家を眺めている。周りの人が「あんた正気か!?」と尋ねたところ、「私は至って正気だよ、こんな幸運にめぐり合えて嬉しいのだ。自分は長年、不動明王の火炎(通常、不動明王は火炎の中に描かれる)を間違って描いてきた。本当の炎とはこうだったんだよ!」 さらに良秀は続ける。「絵仏師は絵さえ上手に描ければそれでいいのだ。良い作品が描ければ家などいくらでも建つ。お前たちはこれと言った才能がないからもったいないなどと考えるんだよ!」 その後、良秀の作品は「よじり不動」と呼ばれ、世間から絶賛された。

…とまあ、シンプルかつ強烈なインパクトのお話である。国語の授業などでは「芸術至上主義」という言葉を使って解説されることが多いが、人によって感想は様々だろう。ちなみに、芥川龍之介がこの話を基にして書いたのが「地獄変」という短編小説である。ストーリーの恐ろしさは3倍増しくらいになっている気がする。参考までに「地獄変」のごく簡単なあらすじもまとめておこう(これから「地獄変」を読もうと思っている方はぜひ読み飛ばして下さい)。

「地獄変」でもやはり絵仏師良秀が主人公。彼には美しい娘がいて、殿様のところに仕えている。ある日、その殿様が良秀に地獄絵図の屏風を描くよう依頼する。良秀は大部分を仕上げるのだが、牛車に乗った高貴な女が車ごと燃え盛る部分がどうしてもイメージが湧かずに描けないと言う。そこで殿様は「ならば実際に用意してやろう」と言うのだが、当日になって用意されたのは良秀の娘。燃える娘を見ながら良秀はなお恍惚とした表情を浮かべ、後日大作を完成させる…。

ああ、恐ろしい。怪談シーズンの夏ということでどうかお許しを…。
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